Lancet Neurol 2014; 13: 924–35 Review

Allodynia and hyperalgesia in neuropathic pain: clinical manifestations and mechanisms
神経障害性疼痛におけるアロディニアと痛覚過敏症:臨床上の特徴とメカニズム
Troels S Jensen, Nanna B Finnerup

 

抄録

アロディニア(通常痛みを感じないはずの刺激によって起こる痛み)と痛覚過敏症(通常痛みを感じる刺激をより強く感じる)は、神経障害性疼痛の患者に良く見られる症状である。両者はさまざまな末梢神経障害と中枢性痛覚障害によく見られ、神経障害性疼痛の患者の15-50%に見られる。アロディニアと痛覚過敏症は感覚を引き起こす感覚モダリティ(触覚、圧迫、針でつつく、冷たい、熱い)によって分類されている。末梢感作と不適応な中枢変化は、アロディニアと痛覚過敏の異なるサブタイプにおける別々のメカニズムによって、これらの反応の生成と維持に関係している。痛みの強さと緩和は臨床の痛み研究における重要な測定値であるが、痛みの複雑な経験を捉えるには十分ではない。アロディニアと痛覚過敏症をより良く理解することは、神経障害性疼痛の根幹である病態生理への手がかりを与え、痛みの治験における新しく、付加的なエンドポイントを与えるだろう。

はじめに

神経障害性痛は、通常体性感覚の情報を伝達する神経システムの創傷や疾病によって起こる多様な一連の状態を示す言葉である。
神経障害性痛の原因となる疾病は解剖学的な位置と原因によってさまざまである。
異なる2つのタイプの神経障害性痛で、特殊でやっかいなものがアロディニアと痛覚過敏である。アロディニアはふつうは痛みと感じない刺激によって痛みを感じるもの、痛覚過敏は痛みをより強く感じるものである。
痛みに対して現状の治療は十分でない。
このレビューは神経障害性痛におけるアロディニアと痛覚過敏の臨床的特徴、メカニズム、将来的な評価尺度について概観する。

神経障害性疼痛におけるアロディニアと痛覚過敏の疫学

神経障害性痛の疫学は、正確な状況を把握しにくい。質問紙調査による有病率は、診断コードを用いた調査よりも高い。同じようにアロディニアの有病率を把握するのも難しい。
1600人以上の糖尿病性神経痛の患者を対象にした調査では、軽いタッチに痛みを感じる人が18%、冷温刺激に対しては14%だった。その調査では、通常は70%にあると報告されているヘルペス後神経障害の47%でしかタッチ誘因性のアロディニアは報告されていない。
1236人の異なる神経障害性痛の患者の質問紙調査ではブラシで誘発されるアロディニアは、全患者の20%、痛みの強い多発性神経障害の12%、ヘルペス後神経障害の49%と報告されている。
原因の異なる482人の神経障害性痛患者では、55%がブラシで誘引されるアロディニア、冷たいものでは、31%、圧では52%だった。いずれかの刺激では、糖尿病性神経障害で52%、ヘルペス後神経障害では92%だった。このように、対象の特徴のみならず、反応を引き起こす方法や分類によっても症状の報告は異なっている。

アロディニアと痛覚過敏の臨床上のアセスメントと特徴

理論上は、アロディニアの定義は、非侵害受容器刺激に対する痛みの反応なのだが、この定義は臨床上はほとんど使えない。というのは、それぞれの患者にとって、どの刺激が侵害受容器を活性化するのか立証するのは不可能だからだ。
臨床用語としてのアロディニアや痛覚過敏は、刺激によって起こる感覚で定義する必要がある。両者の臨床アセスメントは、トリガーポイントの試験、異常な場所のマッピング、過敏の強さの判定などである。簡単なベッドサイドテストは、綿棒や指圧、針でつつく、20度の冷感、40度の温感などである。
より詳細なテストは、レーザー刺激や量的感覚テスト、モノフィラメントやアルゴメーターなど温度テストの機能を備えた機械によるものがあるが、手間も時間もかかる。感覚プロファイルは、アロディニアや痛覚過敏の異なる側面を調べることができるが、臨床上の重要性については未解明の部分が多い。痛覚過敏のテストは、痛覚鈍麻をあいまいにしてしまうことがあるので、過敏の同定の前に痛覚鈍麻の同定をすることが必要かもしれない
異なるタイプの痛みの分布を示すファントムマップは痛みアセスメントの重要な一歩だ。介入前後での広さや強さなどの量的な情報を記録しておくことは、薬の効果の記録の上でも役に立つ。自動描写システムはより正確な測定になるだろう。
神経が障害された結果、細胞の構造、機能、生化学的性質や関係に不適応な変化が起こる。この神経可塑的な変化は、障害が起きた末梢でも、中枢でも起きる。
症状の記述に基づくと、刺激に依存する痛みと依存しない痛みは区別される。この概念にBennettは反論している。彼は、この二つの痛みを分けることは難しいとし、刺激に依存しない痛みは、日常的でサブリミナルな内外刺激のせいで認識されていないアロディニアや痛覚過敏によるものだと主張している。だが、これは証明することも反証することも難しい。臨床的には、刺激依存性の痛みかどうかを区別することは患者の訴えを聞きやすいし、恐らく潜在的な痛みのメカニズムによる分類にも重要だろう。
アロディニアや痛覚過敏でみられる痛み経路の過剰興奮は、末梢の神経障害で見られることは少ない。さらにいえば、アロディニアや痛覚過敏は神経障害性痛に限ったものではなく、骨租しょう症や線維筋痛症などのさまざまな慢性痛全般に見られる、神経システムの過剰興奮を代表する臨床用語であって、そのメカニズムを示すものではない。
アロディニアや痛覚過敏は、痛みを引き起こす感覚の種類によって分類される。末梢性、中枢性いずれもさまざまな神経障害において見られる、機械的な刺激によるものと温度による刺激によるものである。これらの状態は、臨床上はかなり異なる。痛みがひどくなる感覚の変化を予測することは興味深いことだ。

力学的(mechanical)なアロディニアと痛覚過敏

よくある力学的なアロディニアと痛覚過敏は3種類ある。軽いタッチによって引き起こされる動的な力学的アロディニア;ピンやモノフィラメント(400mN)の針刺し刺激によって引き起こされる点状アロディニアと痛覚過敏;皮膚や深部組織への圧力によって引き起こされる静的なアロディニアや痛覚過敏である。

動的な力学的アロディニア

神経障害性痛における動的な力学的アロディニアは、他の似た症状、例えば、カプサイシンを投与後の二次的な神経過敏にみられる機序と共通の機序をもつと推測される。カプサイシン投与後の二次的神経過敏は、刺激依存性の痛みの性質上、最初の過敏領域より上に広がることが多い。また、アロディニアや痛覚過敏の患者は、部分的神経障害による刺激依存性の痛みだけがある患者より、感覚器の欠陥があることは少ない。
動的な力学的アロニデアが、多くの場合、低閾値のAβ線維を経由することは良く知られている。Gracelyらの古典的な観察の中で、継続する痛みとブラシで引き起こされるアロディニアの両方が、神経障害のトリガーポイントの部分ブロック麻酔によって減じると同時に、麻酔効果としてのアロディニアも消えた。さらに、神経障害のある患者のA線維の入力を選択的にブロックすると、動的な力学的アロディニアは消え、C線維を経由する焼けつくような痛みは残った。動的な力学的アロディニアの反応時間に関する研究は、有髄の大線維がこの障害を媒介していることを立証している。Aβ入力は、アロディニアの症状のみならず、痛みの質にも関与している。
神経障害痛の患者に対するAβ入力の圧迫ブロックが増えているのは、誘起される感覚の種類が動的な力学的アロディニアから動的な力学的不快異常感覚まで変化することを示している。これは、不快感覚異常とアロディニアは、いずれも非侵害性の力学的感受性線維からの、度合の異なる入力が統合された同じ症候群の一部であることを示唆している。
小線維からの入力は、アロディニアの伝導駆動力として重要らしい。動的な力学的アロディニアの領域で実験が行われているかわからないが、筆者らは、細い線維の鋭敏化が一部関与していると考えている。
動的な力学的アロディニアは、優しく皮膚をたたくような、快感を伝える、無髄性で低閾値の力学的感受性求心線維に媒介されている可能性がある。だが神経障害性痛における、これらの線維の役割はまだわかっていない。脳卒中後痛のような中枢性の痛みにおいて、温度伝導系が障害され、触覚伝導系が代替している患者においても触覚アロディニアは見られることから、温度入力の障害は痛みの拡張に関係しているだろう。

点状(punctate)アロディニアと痛覚過敏

求心性神経支配における点状アロディニアと痛覚過敏は、動的な力学的アロディニアに比べ、より広い領域に関係しており、末梢入力に加えて中枢性変化にも影響される。
圧迫(compression)による異なる神経線維のブロックに基づくと、点状痛覚過敏は、Aδ線維の活性化とC線維からのマイナー入力によって起動される。動的な力学的アロディニアが、Aβに媒介されるのと対照的だ。モノフィラメント刺激を使った、神経傷害痛のある動物モデルでは、運動反応が引き起こされるが、これは人でも同じである。

静的に引き起こされるアロディニアと痛覚過敏

静的に(圧力のような)引き起こされるアロディニアや痛覚過敏は、あまり認識されていないが、重要である。
動的あるいは点状の痛覚過敏が、最初に起きた場所の上方に二次的に広がるのに対し、静的アロディニアは短時間、最初に痛覚過敏を起こした場所に起きることが多い。神経圧迫ブロックに基づくと、静的アロディニアは、動的な力学的アロディニアとは対照的かつ、熱痛覚過敏には似ていて、感作された抹消の侵害受容器によって媒介されている。
筆者らの臨床研究では、静的、動的なアロディニアがある28人の患者で、この2つの種類は明らかに区別できる異なるタイプの感覚過敏であることが分かった。静的な痛覚過敏の臨床上の重要性を説いている文献は少ないが、深部の(静的な)力学的痛覚過敏は、外傷性の神経傷害や糖尿病性神経障害で注目されている。

力学的アロディニアと痛覚過敏の分子メカニズム

神経の過剰興奮やアロディニアについての分子メカニズムについては、前臨床的な研究が出されているが、その詳細は本稿の目的を超えている。傷害のあと、サイトカイン、神経成長因子など痛覚発生物質が傷害組織領域に入り込む。これらは、非特異的イオンチャネルと特異的ナトリウム、カリウムチャネルの発現と輸送における変化に関連している。
神経末端や軸索上での自発的な異所性活動は、刺激に依存しない痛みに重要だが、アロディニアの反応を起動する因子にもなりうる。神経傷害後、ナトリウムチャネル(特にアイソフォーム;Nav1.3、1.7、1.8、1.9) の発現が変化する。異所性を促進する他のチャネルは、神経の過分極活性化陽イオンチャネルがあり、これはカルシウムチャネルと共に、神経が発火パターンを繰り返すのに重要だ。
感作された侵害受容器あるいは異所性によるものかに関わらず、この末梢で増加した入力は、中枢性感作や障害された神経支配領域外に痛みが広がる、刺激が同じでも痛みが増加したり、刺激は止まっているのに痛みが続くような臨床症状を起こす重要な起動力になる。
神経の感作には、多くのシグナル分子が関与しているが、グルタミン酸受容体群、サブスタンスP、炎症誘発性のサイトカイン、チロシンキナーゼB受容体、異なるプロテインキナーゼなどが含まれる。
力学的アロディニアのメカニズムに関するもう一つの可能性は、Aβ線維が、ふつうなら小さい線維にだけ発現する、カルシトシン遺伝子関連ペプチド、サブスタンスP、ニューロトロピンBDNFのようなニューロペプチドを発現し始める、表現型のスイッチが起こるというものだ。
シナプス後変化もアロディニアに関係しているだろう。これには、NMDA、AMPA、代謝型グルタミン酸受容体、異なるキナーゼや、シナプス強度を増加させるほかの伝導システムが含まれる。セカンドオーダーニューロンにおける正常なGABAの減少やグリシン抑制も含まれるだろう。塩化カリウム輸送のダウンレギュレーションは、セカンドオーダーニューロンを抑制するよりも、膜貫通陰イオンの勾配を変化させ、ネット励起を誘導する。こうした一連の分子メカニズムは、おそらく感作現象や普通なら痛くない刺激によって侵害受容脊髄視床路が活性化することに関係している。

温度アロディニアと痛覚過敏

冷感(cold perception)とアロディニア

初期の心理生理学者たちは冷感を3つの種類にわけた。皮膚の最も敏感な部分を0.5℃~1℃で冷やした時の無害な冷感;15℃~30℃で知覚される冷痛のセンセーション;0℃より低い、とても低い温度での凍るような、突き刺すような冷痛(冷感とは区別される)である。無害でも有害でも、冷感は無髄性のCと薄い有髄性のAδ線維によって媒介されている。
二種類の神経が示唆されている。一つは、30℃近い温度で活性化される低閾値冷タイプ、もう一つは20℃より低い温度で活性化される高閾値の冷侵害受容群である。
冷アロディニアは神経障害性痛の患者によく見られるが、凍傷後の後遺症やシガテラ(魚による神経毒)の患者でも見られる。冷アロディニアの特徴は患者によってさまざまである。
冷アロディニアは、凍傷の患者では、単独で見られることが多いのに対し、神経障害性痛の患者では、他にも感作された症状が見られることが多い。

 

冷覚(cold sensation)の分子メカニズム

冷覚についての分子細胞メカニズムは十分にはわかっていない。しかし、電位依存性イオンチャネルとTRPイオンチャネルファミリーは、冷覚と冷関連痛の伝達に関係している。
TRPM8とTRPA1はいずれも、冷たい温度に反応する三叉と後根神経節細胞に発現する陽イオンチャネルである。特に、TRPM8は、冷シグナリングに関与する神経に非常に多く発現する。TRPM8を発現する低閾値の冷細胞は、シナプス後チャネルを活性化して、冷覚を起こす。高閾値細胞はTRPM8にも発現するが、低いレベルでは、冷痛を引き起こすと考えられる。
Nav1.8も高閾値細胞に発現するが、冷痛チャネルの反応を引き起こすようだ。正常状態でのTRPA1の関与は不明だが、TRPA1はTRPM8が発現する神経上で痛みを引き起こす促進作用があるかもしれない。

冷アロディニアと痛覚過敏の分子メカニズム

冷アロディニアと痛覚過敏にはいくつかの仮説がある。末梢と中枢の感作、あるいはC侵害受容器またはAδ線維の感作のような中枢脱抑制などである。
小線維の神経障害患者において、冷たさとメントールに対するC侵害受容器の反応が見られたが、これは冷アロディニアの説明になりうるし、TRPM8のアップレギュレーションでこの感作を説明できるかもしれない。
ナトリウムチャネルの機能不全は、末梢感作を説明しうるもう一つのメカニズムである。オキサリプラチンを投与された直後、感覚神経でナトリウムチャネルの機能不全を示す軸索興奮の変化が記録されている。これらの患者では、一過性ナトリウムイオンコンダクタンスの変化が冷覚神経の興奮を増加させた結果、冷アロディニアが起こっているかもしれない。同様なことは、シガトキシンで起こる冷アロディニアにも言える。
実験研究からは、異なるナトリウムチャネルが重要であることが示唆されている。末梢神経システムに発現するNav1.7は、力学的あるいは冷たさに引き起こされる反応に必要だが、オキサリプラチンで誘発される冷たさへの反応は別であり、Nav1.6の発現が必要である。げっ歯類の研究では、TRPA1受容体、カリウム過分極活性化陽イオンチャネル、カルシウムチャネルなどが、冷アロディニアと痛覚過敏への関与が示されている。
力学的アロディニアや痛覚過敏と同様の脊髄視床や皮質神経の中枢性感作の分子メカニズムは、中枢性、末梢性神経障害いずれにおいても冷アロディニアと痛覚過敏の根底にあるだろう。
Aδ線維のブロックや疾患は、冷検出閾値の増加や冷痛閾値の減少、冷感覚を氷のように突き刺す、やけどのように熱いなどの感覚に変化させる。これは、Aδ線維の喪失によってCポリモーダル侵害受容線維(熱ピンチ冷線維)の脱抑制が起こり、神経障害性疼痛患者の冷アロディニアを起こすことの説明になりうる。
前臨床研究の観察では、熱やかゆみに対して敏感な、ペプチド性カルシトニン遺伝関連ペプチドα‐発現感覚ニューロンが冷感度を抑えていることが分かった。これらのニューロンはTRPイオンチャネルV1(TRPV1)陽性であり、そのため結果はカプサイシンによるTRPV1求心性の活性化が、冷たさや冷痛の感度を減少させるという事実に一致している。このクロストークの分断によって冷過敏の本性が現れ、結果的に冷アロディニアになり、TRPM8活性化の活性が増加した。それは、神経障害性痛における冷アロディニアと痛覚過敏に対する別の中枢性メカニズムの可能性を示すものである。

熱アロディニアと痛覚過敏

熱刺激はC線維とAδ線維によって伝達される。対応する伝達受容体は、機械的刺激と熱刺激に反応するC線維と機械的熱侵害受容器A線維である。
感熱C侵害受容器には2種類あるようだ。一つは、温度が上昇すると、下がるように速く適応するタイプと温度が上昇し続ける間反応し続ける、よりゆっくりと適応するタイプである。温さや熱による痛みに反応するニューロンの重要な伝達素子はTRPV1である。これは温度が上昇するにつれ、活性が上がる。TRPファミリーの他のチャネル、たとえば、TRPイオンチャネルV2‐V4やプリン作動性受容体も熱の伝達には関与しているだろう。熱に対する痛覚過敏は炎症性疾患にもよくみられるが、末梢性にも中枢性にも媒介されるものだろう。
強力なカプサイシンアナログであるレシンフェラトキシンがTRPV1受容体の脱感作を長期間継続させ、実験的に傷つけた神経では、熱の過敏性はブロックされても触感過敏性はブロックされないことから、TRPチャネルを発現させている神経線維の末梢感作が熱過敏に関与していることが示唆される。
熱過敏の古典的な例は遺伝性の肢端紅痛症(erythromelalgia)である。これは、常染色体優性遺伝疾患で、Nav1.7の組み換えによって活性閾値の低下が起こった結果である。この疾患の患者では、マイクロニューログラフィによると、膜活性の増加の一例としてC線維の異所性活性が知られている。
神経傷害では、主たる熱伝達素子であるTRPV1の発現が変化する。TRPV1は、傷害された線維では、ダウンレギュレーションされるが、障害されていない線維では、アップレギュレーションされ、AδやAβタイプに属する細胞に新たに発現する。総括すると、これらの知見が示唆するのは、TRPV1-感作侵害受容器による末梢と中枢のメカニズムの両方が、神経システムの傷害後の熱過敏の進行や継続に関与しているということだ。

 

アロディニアと痛覚過敏の変調 (modulation)

薬理治療

 

神経障害性痛治療は主に薬理治療である。一連の化合物は、神経障害性のアロディニアや他の症状を変調させるために使用される。薬物は主に、電位依存性、リガンド依存性イオンチャネル、代謝型グルタミン酸受容体リガンド、オピオイド、カンナビノイド受容体モジュレーター、グリシントランスポーター阻害剤である。誘因される痛みに特化した治験はほとんどない。散見されるランダム化二重盲検法などの治験の主たる目的は神経障害性痛の薬理治療効果であって、その中の病歴聴取や検査にアロディニアや痛覚過敏が報告される程度である。ブラシや綿棒に対する動的な力学的アロディニアは、査定される中で最も多く、ついで針刺激に対する痛覚過敏と冷たさに対するアロディニアである。アロディニアや痛覚過敏は少数の対象者による、特定の種類の誘因痛に限局された、結果を示すには低すぎる程度の、ごくわずかな研究にしか含まれない領域だ。三環系抗うつ薬やSNRI、ガバペンチノイド、オピオイド、カンナビノイド、ラモトリギン、メキシレチン、リドカインゲル、ボツリヌストキシンAは、異なる症状の末梢および中枢神経障害性痛において、動的力学的アロディニア、冷アロディニア、針刺激痛覚過敏を緩和することがわかっている。さらに、異なる種類の誘因痛に効果的な静脈注射療法として、ナトリウムチャネルブロッカー、オピオイド、NMDAアンタゴニスト、プロフォールが力学的および冷アロディニアに有効であることを示されている。アロディニアや痛覚過敏が全般的な治療効果の予見になりうるかを調べた研究もある。針刺激の痛覚過敏は、HIV多発神経障害におけるプレガバリンの全般的な治療効果を予見したこと、動的力学的アロディニアなどが脊髄損傷におけるラモトリギンの反応を予見したこと、逆に、動的力学的アロディニアがヘルペス後神経痛におけるプレガバリンや多発性硬化症におけるレベチラセタムのネガティブな予見になったことなどが報告されているが、これらはいずれも事後分析によるものである。全般的な痛み緩和効果の予見としてのアロディニアや痛覚過敏を調べた6つの静脈注射療法による治験でも、事前に結果を定義していた研究は一つだけで、リドカインの静脈注射の反応を静的、動的力学的アロディニアが予見したというものだったが、ほかの研究では、リドカイン、モルヒネ、ケタミンいずれの反応の予見にも失敗した。最近の研究で、刺激によらない痛みの軽減は、誘発された痛みの軽減とマッチするかどうかの立証がなされた。中枢神経の求心性入力を完全にブロックした、末梢の神経傷害痛と誘発痛のある患者群で、刺激によらない自発的な痛みのブロックは、誘発された痛みもブロックした。このことは、中枢で媒介された誘発痛の発生には、末梢からの求心性の起動が必要だということを示している。 

非薬理的治療

神経傷害 (injury)によるアロディニアと痛覚過敏は脳から変えられる。末梢神経傷害の患者における心理学的、理学療法的変調によって、アロディニアの減少が変化することはわかっている。電気的、磁気的な刺激法が神経障害性痛や関連するジセステジア、アロディニアに効果的だというレビュー論文もある。しかし、総論的には、アロディニアや痛覚過敏に対する刺激の効果を確立する大規模な研究が必要である。

結論と今後の展望

神経障害性痛におけるアロディニアと痛覚過敏は、いずれも感覚喪失を伴うもので、侵害受容システムにおける活動の重要な証である。
異なる刺激のタイプによって、アロディニアと痛覚過敏がさらに分類されることで、痛みのメカニズムの根源に関するより多くの洞察が得られるだろう。それにより、それぞれに合った異なるタイプの治療を行うことができるだろう。
現存する薬剤は、作用機序において特別なものではない。特別な薬がないということが、病理学的な基盤を明らかにすることを阻んでいる。今後、新しい、より特異的な薬が出てくれば、治験のエンドポイント測定の選択肢が広がり、アロディニアと痛覚過敏のサブタイプを見分けるのに使えるようになるだろう。