ドパミン/アセチルコリン、ドパミン/セロトニンは、拮抗するシーソー関係にあります。セロトニン・ドパミン拮抗薬の脳内ホルモン相互作用については未解決な部分もありますが、かなりの部分で明らかになってきました。私が注目するのは、少量のSDA、リスペリドンの処方はデメリット副作用よりもメリット薬効が勝るからです。
リスペリドンの注目すべき4点の薬効は、
①強い5HT-2A遮断作用、中等度のα2A遮断作用、軽度のD2遮断作用があり、このバランスにより副作用である錐体外路症状を軽減します。
②D3遮断作用により帯状回ドパミン放出が促進され、D2受容体を活性化し意欲を回復します。
③5HT-2A遮断作用は前頭葉の認知と運動機能に関わる側坐核D1を活性化し、認知障害を改善します。
④α2遮断作用は前頭葉におけるノルアドレナリン神経の働きを高め、前頭葉機能を適切化し、認知とうつを改善します。
SDAは睡眠を深くする作用があります。また、リスペリドンは抗α1作用による鎮静化作用があります。クエチアピン(セロクエル)は、リスペリドンとほぼ同様の作用と効果を持っていますが、SDAよりも多くの受容体に適度に作用する多元受容体標的化向精神薬(MARTA)に分類されます。リスペリドンに比べて鎮静作用や催眠作用が強く、肥満を来しやすい副作用があり、糖尿病には禁忌という使いにくさがあります。ミルタザピン(リフレックス)は、ドパミン作用がないだけで、リスペリドンに作用がよく似ており、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)に分類されますが、抗ヒスタミン作用が強く、眠りに入りやすくしたり深い眠りの時間を増やしたりして睡眠の質を高める効果があります。しかし、クエチアピン同様、体重増加が問題になります。そのため、これらは少量をより意識して処方します。アリピプラゾール、エビリファイはドパミン量を調節する作用があるドパミン・システム・スタビライザー(DSS)と呼ばれ、精神科ではよく使用される副作用の少ない薬ですが、少量処方では効果を実感しにくいため、脳過敏症の治療ではほとんど使用しません。精神科でないため、効果を実感するほどの増量には抵抗があります。少量処方で一番使いやすい精神科薬はリスペリドン、次に使いやすいのがクエチアピンとミルタザピンです。いずれも精神科で処方される用量に比べて相当に少ない量です。